今回は運動器機能向上加算についてのお話です。
現在通所リハビリテーションや通所介護事業所でお仕事されている方には耳慣れた加算だと思いますが、再確認の意味も込めてお読みいただければと思います。
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また機能訓練士になられたばかりで勉強中だという方や、これから機能訓練士を目指す方の参考にもなると思います。
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運動器機能向上加算とは

要支援者(要支援1・要支援2)・事業対象者(地域包括支援センターや区市町村介護保険課で実施する基本チェックリストに該当した方)を対象とした介護予防サービスを提供する事業所(通所リハビリテーション・通所介護事業所)が算定できる加算のことです。
ここで大切な目的としては、要支援者・事業対象者が要介護状態になることを防止し、住み慣れた地域で日常生活を維持または改善することを目的として、必要な運動プログラムを提供し、ご本人による改善方法の習得や運動習慣の定着を目標としています。
つまり、高齢者は自分の体を健康に保てるようにしていこうという目的です。
運動器機能向上加算の算定要件について

介護給付の個別機能訓練加算と似ていますが少し違う部分があるのでしっかりと確認しましょう。
- 専ら機能訓練指導員の職務に従事する、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師(以下理学療法士等という)を1名以上配置していること
- 利用者さまの運動器の機能を利用開始時に把握し、理学療法士等、介護職員、生活相談員やその他の職種の者が共同して、運動器機能向上計画を作成すること
- 利用者さまごとの運動器機能向上計画に基づき、理学療法士等、介護職員、関係職員が運動器の機能向上サービスを個別的に実施していること
- 利用者さまの運動器機能向上計画に基づき、実施されているサービスの進捗について、定期的に記録を行っていること
- 運動器機能向上計画の進捗状況を定期的に評価すること
- 定員超過利用、人員基準欠如による減算を受けていないこと
※ここで特に注意する点としては、定員超過利用や人員基準欠如になっていないことを把握しておきましょう。せっかくの加算なのに算定出来なければ意味がありませんからね。また、個別的に実施する必要があり個別機能訓練加算とは異なる点です。
運動器機能向上加算のPDCAサイクル

計画書の作成、サービスの提供、記録、定期的な評価、進捗状況の報告、計画書及びサービスの見直しなどの仕事があります。
順番にみていきましょう。
〇運動器機能向上計画書の作成・必要項目
利用者さまの利用開始時には運動機能を把握し、機能訓練士、介護職員、生活相談員、その他関係する職種の者が共同して計画書を作成しなければなりません。
また作成した計画書の内容と、サービス提供による効果(運動効果)、リスク、緊急時の対応などを利用者さま又はご家族に分かりやすく説明し、同意を得なければいけません。
~必要な項目~
- 長期目標(概ね3ヶ月程度で達成できる見込みのある目標)・短期目標(長期目標を達成するための概ね1ヶ月程度で達成できる見込みのある目標)
- 運動の種類
- 実施期間(概ね3ヶ月)、頻度、1回あたりの実施時間など
※目標は、介護予防サービス計画書(ケアプラン)に沿った内容でなければなりません。
※実際に、長期目標が具体的ではなく、また長期目標達成のための短期目標が段階的になっていないなどの実地指導もあったそうです。
※なお運動器機能向上計画書に相当する内容を、介護予防通所計画に記載する場合は省略することも可能です。
※厚生労働省は、介護予防マニュアルとして以下のような報告書を発行しています。
厚生労働省 介護予防マニュアル(改訂版:平成24年3月)より
〇サービスの提供
運動器機能向上サービスは、個別的に実施します。集団的なサービスのみは不可ですが、併用は可能とされています。
〇記録
運動機能を定期的に記録します。こちらは以外と労力がいります。
〇定期的な評価
プログラム開始から3ヶ月後に長期・短期目標達成度や客観的な体力測定結果、日常生活活動能力の改善状況などを評価し記録します。
加えて、短期目標に対しての毎月のモニタリング(機能評価)が必要となるので忘れずに行いましょう。
※客観的な体力測定とは、主に握力、開眼片足立ち、TUG、5M歩行時間が厚生労働省の体力測定マニュアルより推進されています。
〇進捗状況の報告、計画書及びサービスの見直し
実施期間終了後は評価結果を介護予防支援事業者(ケアマネージャー)へ報告します。なお運動器機能向上サービスの継続が必要と判断された場合には上記の一連の手続きを再度行います。
運動器機能向上加算の実際にあった実地指導例

皆さん(事業所等)が指導されない為に、よく指導されている例をいくつ紹介したいと思います。
- 長期目標の設定期間が3ヶ月ではなく、6ヶ月や1年となっていた。
- 3ヶ月の長期目標を達成するための概ね1ヶ月程度で達成可能な短期目標が設定されていない。
- 概ね1ヶ月ごとに行うこととされている、短期目標の達成度と客観的な運動器の機能の状況(例えば握力、歩行能力等)についてモニタリングが実施されていない。
- 運動器機能向上計画に定める実施期間(概ね3ヶ月間程度)終了後、利用者ごとに、長期目標の達成度及び運動器の機能の状況について、事後アセスメントを実施し、その結果を介護予防支援事業者(ケアマネージャー)に報告することとなっているが報告を行っていない。
- 介護予防支援事業者(ケアマネージャー)に報告は行っているものの、記録がない。
- 運動機能向上計画に対する評価の記録がない。また、当該計画・評価を利用者又はその家族へ説明を行った記録がない。
長期目標及び短期目標例

計画書に記載される目標は、介護予防サービス計画書(ケアプラン)に沿った内容でなければなりません。
また長期目標(概ね3ヶ月で達成できる見込みのある内容)に対し、短期目標(1ヶ月で達成できる見込みのある内容)は長期目標を達成するための目標であり、かつ段階的でなければなりません。
ほんの一例を挙げてみます。
長期目標:散歩を毎日の日課にする
短期目標:1ヶ月目 歩行能力を高めるための運動に必要な基本動作が一人で行える
2ヶ月目 自宅周辺を10分散歩できるようになる
3ヶ月目 不整地での歩行が安定し、30分程度の連続歩行が可能となる
長期目標:独居のため、自分でお風呂の掃除が安全に行える
短期目標:1ヶ月目 肩の可動域を広げ、高い所に手が届くようになる
2ヶ月目 安全にしゃがんだり、浴槽を安全にまたげるよう柔軟性を高める
3ヶ月目 お風呂掃除に必要な一連の動作が一人で行える
運動器機能向上加算のQ&Aについて

厚生労働省のQ&A(平成18年4月)にて報告されている運動器機能向上加算のQ&Aについて質問の多い部分をご紹介します。
Q:運動器の機能向上加算は1月間に何回か。また、1日当たりの実施時間に目安はあるのか。 利用者の運動器の機能把握を行うため、利用者の自己負担により医師の診断書等の提出を求めることは認められるのか。
A:利用回数、時間の目安を示すことは予定していないが、適宜、介護予防マニュアルを参照して実施されたい。 また、運動器の機能については、地域包括支援センターのケアマネジメントにおいて把握されるものと考えている。
Q:介護予防通所介護における運動器機能向上加算の「経験のある介護職員」とは何か。
A:特に定める予定はないが、これまで機能訓練等において事業実施に携わった経験があり、安全かつ適切に運動器機能向上サービスが提供できると認められる介護職員を想定している。
個別機能訓練加算との違い

要支援者に対しては運動器機能向上加算、要介護者に対しては個別機能訓練加算があります。似ているようで2つには違いがあるのでしっかりと区別出来るようにしましょう。
まず運動器機能向上加算では、対象者は要支援1・2及び事業対象者に対して、大まかな目的は運動器の機能向上により要介護への予防となります。
それに対し個別機能訓練加算では、対象者は要介護1~5の者に対して、目的は加算Ⅰでは心身機能の維持・向上であり、Ⅱでは生活機能及び社会参加の維持・向上を目指すものとされています。
次に計画書においては、利用開始時には運動機能を把握し、機能訓練士、介護職員、生活相談員、その他関係する職種の者が共同して計画書を作成しなければいけないのは同じですが、運動器機能向上加算の目標設定は長期が概ね3ヶ月、短期は1ヶ月に対し、個別機能訓練加算では長期が概ね6ヶ月、短期は3ヶ月などの違いがあります。
また実際のプログラムでは、運動器機能向上加算では個別的に運動・指導しなければいけませんが、個別機能訓練加算では個別的または集団的な(加算Ⅱでは5名程度以下の指定あり)運動となっています。
表にまとめましたので、以下ご参照ください。

まとめ
運動器機能向上加算についての確認、また参考になりましたか?
運動器機能向上加算をとるためには、法を遵守し、さらに利用者さまの満足にもつなげていかなければいけません。
今回、その一助になれば幸いです。
機能訓練士になりたての頃は、個別機能訓練加算との違いに悩んだり、1ヶ月ごとの評価などが大変で苦労もあります。
しかしきちんと理解し、やらなければいけない事を1ずつクリアし、スケジュールを組んで実行していけば何とかなるものです。
計画書の作成やプログラムの実施、評価、報告など、やるべき事はたくさんありますが、やはり利用者さまの笑顔や喜びの声を聞くとがんばれますね。
今回は少し長くなりましたが、最後までご覧頂きありがとうございました。